心理的安全性の作り方|「ふりかえり」でチーム力向上と組織の成長を促す

チームで仕事を進めていく上で、メンバー間の関係性はパフォーマンスに直結する重要なポイントです。チームのパフォーマンスを引き出す要素として、近年とくに重視されているのは「心理的安全性」です。

この記事では、心理的安全性の定義や必要とされている理由をわかりやすく解説します。心理的安全性の醸成に効果的な取り組みや、活用できるテンプレートも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

心理的安全性とは

心理的安全性は、ハーバード大学ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念です。チーム内において、対人関係におけるリスクを取っても安全であるという信念がメンバー間で共有されている状態のことを指します。

心理的安全性が重要視されている理由

近年、心理的安全性が重要視されているのは、チームのパフォーマンスの向上に決定的な役割を果たすためだといわれます。株式会社ヌーラボでは、異なる職種や部門のメンバーから形成されたチームが、助け合いながら共通の目的に向かって自律的に動けるチームを設計・運営するための概念を「チームワークマネジメント」と定義しています。このチームワークマネジメントに求められる要素にも「心理的安全性の向上」があげられており、その他の「目的の共有」「役割の明確化」「リーダーシップの発揮」「コミュニケーション設計」とともに「チームワークマネジメント」を実現するために欠かせないものだとしています。

チームワークマネジメントに必要な5要素。1. 目的の共有。2. 役割の明確化。3. リーダーシップの発揮。4.コミュニケーション設計。05.心理的安全性の向上。

5つの要素にあげられる理由は、心理的安全性の向上によって、メンバーが自由に発言しやすい環境が生まれ、アイデアの質や問題解決のスピードが向上し、チームの持続的な成長と成果につながるためとされています。

心理的安全性は「ぬるま湯」とは異なる

心理的安全性とよく混同されるのが「ぬるま湯」状態のチームです。ぬるま湯とは、組織メンバー間の信頼よりも相互尊重が優先され、「遠慮」や「波風を立てないこと」が重んじられている状態を指します。表面上は平穏な組織のようでも、所属するメンバーは対人関係におけるリスクを避けようとするあまり、チームに対して個人が意見を表明するのを控えがちです。

これに対して心理的安全性が確保されている組織では、チームメンバー間の相互尊重と信頼がバランスよく作用しています。そのため、各自が率直な意見を表明できる環境が整っており、チーム全体の改善や修正を高い精度で実現できる点が、「ぬるま湯」組織との大きな違いです。

心理的安全性を高めることで解消される不安

相互尊重が優先されているチームの場合、個人がチームに対して発信することは「対人関係のリスク」と捉えられがちです。対人関係のリスクは次の4つの「不安」として個人の心理に現れます。心理的安全性は、この不安を取り除く鍵として定義づけられています 。

  • 無知だと思われることへの不安

「そんなことも知らないのか」と思われたくないために、意見を表明できない心理状態。

  • 無能だと思われることへの不安

能力不足を疑われたくないがために、自身のミスを隠したり、ごまかしたりするような心理状態 。

  • 邪魔だと思われることへの不安

自分の発言によって話し合いが長引いたり、他の参加者の発言時間が削られたりするのではないか、という遠慮やためらいを感じている心理状態 。

  • ネガティブだと思われることへの不安

他のメンバーの提案に対して懸念やリスクを指摘する際、否定的・非協力的な意見を述べているかのように受け取られるのではないかと恐れる心理状態 。

心理的安全性を醸成することで、こうした不安が取り除かれ、早期に不明点を解消したり、リスクを共有し問題解決を早めたり、新しい視点を提示したりといったチームの成果に貢献する行動が促され、チームのより良い成果につながります。

心理的安全性の醸成には「ふりかえり」が有効

ここまで見てきたとおり、個人がチームに向けて意見を表明しにくくなるのは「対人関係のリスク」が原因です。この問題を解消し、心理的安全性を醸成するには、考えていることや感じていることを「言ってもよい」「言いやすい」といった場を設ける必要があるでしょう。

こうした発言を引き出す場としておすすめしたいのが「ふりかえり」です。各メンバーがこれまでの行動や得られた成果、改善が必要と思われる点について忌憚のない意見を出し合い、共有する場を設けることで、前述の「4つの不安」を抱きやすい状況を解消しやすくなるからです。

心理的安全性を高めるふりかえりに役立つテンプレート

チームでふりかえりを行う際には、テンプレートの活用をおすすめします。テキストベースの共同作業では、発信内容と個人を紐付ける傾向が弱まり、より客観的な視点に立ってメンバーの意見を確認しやすくなるからです。また、各自の意見が可視化されるため、出された意見を俯瞰して見やすくなるメリットも得られます。心理的安全性を高めるふりかえりに役立つテンプレート7選を見ていきましょう。

プロジェクトの改善点を見つけたい:4Lモデルふりかえり

Liked、Learned,Lacked、Longed forの4つのエリアにそれぞれコメントが集まっている。「4Lモデルふりかえり」テンプレート

プロジェクトの状態を評価し、改善点を見つけるためのフレームワークです。「Liked(気に入った)」「Learned(学んだこと)」「Lacked(不足していたこと)」「Longed for(憧れ)」の4つの要素をふりかえりに取り入れることで、チームの士気や意欲を測るのに役立ちます。メンバー間の温度差や思考の深度差を埋め、チームの方向性を統一したい場合におすすめのテンプレートです。

プロジェクトの継続的な評価・改善に:KPTふりかえり(Keep Problem Try)

Keep、 Problem、Tryの3つのエリアにそれぞれコメントが集まっている。「KPTふりかえり(Keep Problem Try)」テンプレート

「Keep(継続したいこと)」「Problem(改善すべき課題)」「Try(新しくやってみたいこと)」の3要素から構成されるテンプレートです。現状ではうまく機能していることと、変更する必要があることをチームでふりかえりながら検証する際に役立ちます。プロジェクトの段階ごとに継続的な評価を行いたい場合や、すぐに実行できる改善案を見出したい場合におすすめです。

次へつなげる改善を見出す:アフターアクションレビュー

計画、進捗、学びの3つのエリアに個別の質問と回答が書かれている。「アフターアクションレビュー」テンプレート

「何がうまくいったのか」「どこに改善の余地があったのか」「次にどのようなことに活かせるのか」を明確にするためのテンプレートです。プロジェクトを計画からふりかえることで、達成度合いについて共通認識を持ってより効果的な改善につなげられます。定期的なふりかえりを通じてチームの状態を体系的に整理し、次の成功へとつなげたい場合に適しています。

チームの現状確認と改善作業に:スターフィッシュふりかえり

星型の図形が5つのエリアに分けられており、それぞれのエリアにコメントが記載されている。「スターフィッシュふりかえり」テンプレート

「続けるもの」「増やすもの」「始めるもの」「やめるもの」「減らすもの」の5つの視点からふりかえりを行う際に活用できるテンプレートです。各メンバーが現状の進行状況を報告し合い、フィードバックを提供し合う過程で実施すべきアクションリストを作成できます。チームのリソース配分やプロセスの改善を測りたい場合におすすめです。

チームの生産性を高めたい:ふりかえりテンプレート(Start/Stop/Continue)

Start、Stop、Continueの3つのエリアにそれぞれコメントが集まっている。「Start/Stop/Continue」テンプレート

「Start(なにを始める?)」「Stop(なにを止める?)」「Continue(なにを継続する?)」の3つの視点からパフォーマンスを評価し、解決策を協力して考えるためのテンプレートです。メンバーの課題感と解決に向けたアクションの方向性が統一される効果が期待できます。チームの障害となっている要素を浮き彫りにし、生産性を高めたい場合におすすめです。

メンバーの相互理解を深めたい:喜怒哀ふりかえり

Mad、Sag、Gladの3つのエリアにそれぞれコメントが集まっている。「喜怒哀ふりかえり」テンプレート

「Mad(怒):イライラする・逆効果となる」「Sad(哀):落胆する経験・改善が必要な問題」「Glad(喜):改善され成功した面」の3つの観点からふりかえりを行うためのテンプレートです。メンバーの感情を軸に、人間中心の視点からプロセスを評価したい場合に役立ちます。各メンバーの心理状態を踏まえて改善策を模索したい場合や、メンバー間の相互理解を深めたい場合におすすめです。

チームの忌憚ない意見を拾う:気軽なふりかえり

良かったこと、悪かったこと,アイデア、アクションの4つのエリアにそれぞれコメントが集まっている。「気軽なふりかえり」テンプレート

チームメンバーが業務の良い点・悪い点について、ふりかえりを行うためのテンプレートです。何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを話し合う過程で忌憚のない意見を出し合うことで、実行可能な目標を立てることにつながります。一般的なふりかえりミーティングよりも迅速に行いやすいため、チームの状況把握やメンバーの認識合わせを高頻度で実施したい場合におすすめです。

ふりかえりの実施にはホワイトボードツールがおすすめ

心理的安全性は、メンバーが異論を唱えることにためらいを感じず、発言によって恥をかいたり、拒絶されたり、罰せられたりしないという確信を持てる状態を指します。いかに「言いやすい」チームにするかがポイントとなるため、ふりかえりを取り入れることは有効な解決策の1つとなるでしょう。

ふりかえりは口頭だけでなく、テキスト入力も取り入れることをおすすめします。各メンバーの発言が可視化され、情報を俯瞰しやすくなることに加え、ふりかえりの履歴を記録として残せるからです。また、関係者で会議の時間を合わせなくても、個々のタイミングで入力することができ、ほしいタイミングですぐにふりかえりを実行できるのも魅力です。

株式会社ヌーラボでは、直感的な操作性で多様な人が気軽に共同作業しやすいオンラインホワイトボードツールとしてCacoo(カクー)を提供しています。Cacooでは、本記事で紹介したテンプレートを含む、180種類以上のテンプレートをご活用いただけます。 心理的安全性の高いチーム作りを、Cacooの多様なふりかえりのテンプレートの活用から始めてみてはいかがでしょうか。

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