
企業間の競争が激化しつつある現代において、事業の拡大は重要な経営戦略の1つといえます。事業を拡大するには新規事業を創出する方法もありますが、まずは売上や収益の基盤となる既存事業の拡大から着手していくのが基本的な手順といえるでしょう。
この記事では、事業拡大に向けた主な方法や事業拡大を加速させるメリット、推進する際のポイントをわかりやすく解説しています。具体的な施策を検討するにあたって活用できるテンプレートも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
事業拡大を図る2つの方法
既存事業の拡大を図る方法には、「新規市場の獲得」と「既存顧客との取引拡大」の2つのパターンがあります。
新規市場を開拓する
新規市場の開拓を進める方法として、主に次の2点が挙げられます。

M&Bやパートナーとの協業による、新たな市場への参入
すでに技術やノウハウ、販路などを確保している事業者との提携・協業によって、事業拡大を図る方法です。これまで自社が持ち得なかったノウハウを活用できるため、新たな市場へ参入するにあたって必要とされる準備期間をショートカットできる可能性があります。
既存の技術やリソースを活用した、異なる顧客セグメントへのアプローチ
自社が保有している技術やリソースを活用して、従来とは異なる顧客層へアプローチする方法です。たとえば、従来は女性向けに開発・製造・販売されていた化粧水を、男性向け化粧水として打ち出すといった施策が挙げられます。自社の強みやこれまでの経験を活かしつつ、新たな市場を開拓できる点が大きなメリットです。
既存顧客との取引を拡大する
既存顧客との取引拡大に向けた主な施策には、「高付加価値化」と「関連商品の展開によるクロスセル」の2通りがあります。

高付加価値化
既存の商品・サービスに付加価値を上乗せして、顧客単価の上昇を目指す手法です。新たな機能の付加やサービスの充実化などが想定されます。あるいは、ブランド力を高めることによって独自のストーリーを浸透させ、顧客エンゲージメントの強化を図るのも1つの方法です。
関連商品の展開によるクロスセル
現在の主力商品と関連する商品のセット購入を促す手法です。一例として、ソフトウェアのライセンス契約を申し込む際に、初期設定サービスやセキュリティ対策ソフトの同時購入を促すといった手法が挙げられます。
事業拡大を加速させるメリット

事業拡大に注力することによって得られるメリットは、主に次の3点です。
売上・利益が増加する
1つめのメリットは、売上・利益の増加が見込めることです。既存事業が成熟市場であればあるほど、売上・利益の上昇を期待できないケースが少なくありません。新規市場への参入や既存顧客との取引拡大によって、既存の技術やリソースを売上や利益の拡大につなげることができると考えられます。
新規顧客を発掘できる
新規顧客の発掘につながることも、大きなメリットの1つです。新規市場を開拓することで、市場での顧客接点が増え、自社の知名度が向上し、結果として既存事業でもシェアの拡大につながる可能性があります。
事業リスクが分散される
事業の柱が増えることは、リスクヘッジにもつながります。昨今では災害などの不可抗力によって、市場が急変するケースも少なくありません。単一の事業に注力していた場合、こうした変化によって甚大な影響を受けることも考えられます。新規市場の開拓や既存顧客とのロイヤリティの拡張は、主力製品の市場の急速な縮退に備えた対策になりえます。
事業拡大を進める際のポイント

事業拡大を進めるにあたって、実践しておきたい3つのポイントを紹介します。
段階的に拡大を図る
事業拡大は段階的に進めていくことが重要です。急激な事業拡大は組織統制の欠如につながりやすく、商品やサービスの質を低下させる原因となりかねません。さらに、事業拡大によって見込んでいた利益や売上が立たない場合、急速な拡大は甚大なサンクコストを生みます。どのようなステップを踏んで事業拡大を目指すべきか、目標とスケジュールをあらかじめ可視化しておくことをおすすめします。
リソースの分析と調整を行う
自社が現状どういったリソースを保有しており、それらをどのように活用できるのか、事前に十分な分析を行っておく必要があります。たとえば、対応すべきサービス数が増加した場合に既存の受注・請求システムで対応できるのか、といった点を検証し、あらかじめ対策を講じることが大切です。リソースの分析と調整を実施しておくことで、新たに必要となるリソースについても適切に判断しやすくなるでしょう。
人材の過多や最適なコミュニケーションラインを可視化する
人材の配置は、現状を把握した上で最適なコミュニケーションラインの設定が重要です。既存の人材の強みや得意分野を活かせるよう効果的に配置しつつ、不足分は社外リソースの活用も検討が必要です。さらに、意思決定を誰がどのように行うのか、判断に必要な報告や連絡をどういった経路で伝えるのか、といった点を可視化し、共通認識を形成しておくのが得策です。
事業拡大の第一歩は「可視化」

ここまでに見てきたとおり、事業拡大を図るには新たな市場や顧客へアプローチする必要があります。一方で、未知の市場や顧客層へのアプローチにどの程度の勝算があるのか、計画の精度は十分に高いのか、といった点を検証するのは決して容易なことではありません。
こうした検証は各人が頭の中で行うだけでなく、誰が見てもわかる形にして示し、共通認識を形成しながら進めることが非常に重要です。計画や戦略、組織体制を可視化して共有化を図ることは、事業拡大に向けた第一歩となるでしょう。
段階的な事業拡大に役立つテンプレート3選
段階的な事業拡大を成功へと導くには、事業計画や戦略を可視化し、共有しながら検討を進めることが重要です。一方で、可視化するためのフォーマットをエクセルやパワーポイントで一から作成すると、フォーマット作り自体が少なからず負担になりかねません。事業計画や戦略策定を効率的に進める上で役立つテンプレートを紹介します。
5カ年計画テンプレート

長期的な目標を整理し、達成に向けた道筋を明確にするためのテンプレートです。大きな目標を小さなステップに分けられるため、何から実行すればよいのかがわかりやすくなります。明確なロードマップがあることで、チームの集中力やモチベーションも維持しやすくなるでしょう。具体的なマイルストーンと戦略を設定したいとき、事業成長の方向性を明確にしたいときにおすすめです。
OKR計画テンプレート

OKR(目標と主要成果指標)は、チームがもっとも重要なことに集中できるようにするためのテンプレートです。達成可能な目標を明確に定義し、それぞれの目標を測定可能な成果に結び付けることで、共通の目標に向かって進みやすくなります。事業拡大に向けた進捗状況を定期的にレビューしたい場合や、目標達成に向けたチームメンバーのモチベーションを維持したい場合におすすめです。
戦略マップ

組織の目標と、目標達成に向けて必要な要素をチームで共有・理解するためのテンプレートです。組織の主要分野における目標を明確にすることで、各チームが全体の中でどのような役割を果たしているのかを確認できます。事業拡大に向けた組織構造を可視化したい場合や、整理された形で共有したい場合におすすめです。
自社リソースの分析に役立つテンプレート2選
事業拡大に向けて、現状のリソース分析を行いたい場合に活用できるテンプレートを2つ紹介します。
SWOT分析

目標達成に向けてプラス/マイナスとなる要因を、内側(組織内)や外側(環境や周りの状況)に分けて評価するためのテンプレートです。
・Strengths(強み):自分にとってプラスとなる内部の特徴や条件
・Weaknesses(弱み):自分にとってマイナスとなる内部の特徴や条件
・Opportunities(機会):自分にとってプラスとなる外部の条件
・Threats(脅威):自分にとってマイナスとなる外部の条件
事業拡大を目指す上で自社の現状が有利かどうか、どのような目標が適しているのかを分析したい場合に適しています。
SOAR分析

将来を見据えたポジティブな面に焦点を当てるためのテンプレートです。ビジネス、部門、製品、機能、または自身を評価し、市場の他の部分とどう比較されるかを整理して理解できます。自社の現状を分析し、測定可能な目標を設定したい場合や、それぞれの目標達成に向けた具体的な行動計画を立てたい場合におすすめです。
人材の過多や最適なコミュニケーションラインの可視化に役立つテンプレート5選
事業拡大に向けた人材の配置やコミュニケーションラインなど、組織体制の可視化に活用できるテンプレートを紹介します。
RACIチャート(責任分担マトリクス)

RACIチャート(責任分担マトリクス)は、チームメンバーの責任を明確にするためのテンプレートです。Responsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(協業先)、Informed(報告先)の役割を可視化します。事業拡大に向けてどの段階で誰が何をするのかを一覧化したい場合や、関係者に情報を提供して円滑な進行に役立てたい場合におすすめです。
マトリクス組織図

組織内でさまざまなチームやプロジェクトに所属する人々の役割を一覧化するためのテンプレートです。上下関係だけでなく、各々が異なる上司に報告しながら同じチームで働く人々の関係を可視化できます。部門間で知識や意思決定を調整したい場合や、機能別にプロジェクトベースの権限構造を定義したい場合におすすめです。
組織図

役割、責任、個人同士の関係といった組織の内部構造を可視化するためのテンプレートです。チームメンバーが組織内の全員の立場と、責任レベルを整理できます。事業拡大に向けた予算編成や指揮系統の理解促進、メンバーの役職の把握に役立てたい場合におすすめです。
組織図(アイコン付き)

各メンバーの関係性や役割を可視化するためのテンプレートです。職務内容や人員配置の評価、責任の概要を一覧で把握したい場合に役立ちます。組織内のメンバーの名前と役職を追加するだけで組織図を作成できるため、最適な人材配置やコミュニケーションラインを検討する際に活用できるでしょう。部門とチームを分けて構造を明確化し、コミュニケーションラインをわかりやすく示したい場合におすすめです。
組織図(シンプル)

役割、責任、個人同士の関係といった組織の内部構造をシンプルに視覚化できるテンプレートです。各チームメンバーの組織内における立ち位置や、責任レベルを一覧で示したい場合に適しています。事業拡大に向けた予算編成や指揮系統の理解促進をはじめ、メンバーの役職の把握に役立てたい場合におすすめです。
現状と目標の可視化で事業拡大を加速させよう
事業拡大を実現するには、「新規市場の開拓」「既存顧客との取引拡大」のいずれかを実行することになります。段階的な拡大・リソースの分析と調整・人材配置の最適化やコミュニケーションラインの可視化を通じて、着実に事業の拡大を図っていくことが大切です。計画や戦略、組織体制を可視化して共有化を図ることは、事業拡大に向けた第一歩となるでしょう。
今回紹介したテンプレートを活用したい方には、オンラインホワイトボードツール「Cacoo(カクー)」の活用をおすすめします。本記事で紹介した10種類のテンプレートを含む、180種類以上の豊富なテンプレートを利用可能です。組織やチームの共通認識を形成して、事業拡大の実現に向けて踏み出してみてはいかがでしょうか。